自由放任的資本主義の克服

20世紀は、労働基本権の保障と経済活動の自由という2つの歯車を噛み合わせることが、国の経済政策の大きな目標となった時代でした。

つまり、この時代、先進国では、科学技術や生産管理の向上による経済成長が続きました。そして、他方で、大恐慌を乗り越え、社会保障の重要性が認識されると、労働者の権利の保障や社会保障を整備することで人々の生活を保障し、ひいては、消費者の購買力を向上させ、それが経済成長に繋がるという、良い循環となったのです。

労働法の危機

ところが、21世紀に入り、現在、この2つの歯車がうまく回り続けることはとても難しい時代なっています。

その要因は、標準的であった工場での単純画一的な労働者層が、ホワイトカラー労働者、複雑・専門的な技術労働者、パートタイム労働者といった、非均質的な集団に変化していったこと、高度経済成長が終わり、経済のグローバル化による国際競争が激化したことによります。

多様な労働者層を一律に強力に保護することは、国際競争力の維持にとっては非効率なものとみなされ、経済の好循環の歯車だった社会保障は、逆に、国家の財政の逼迫の要因ともなりました。

時代は繰り返す?

このような危機に直面すると、労働者の権利の補償は、資本家階級にとって、硬直的な労働市場規制とみなされました。その結果、労働市場の自由化などの政策がとられるようになったのです。

しかしそれは、かつての自由放任主義的な資本主義の再来ともいうことができます。

資本を持たざる者は、19世紀から20世紀初頭の労働者階級の地位に追いやられてしまったのです。